新たなモーツァルトの魅力に触れる
モーツァルトと言えば、誰もがその名を知る偉大な作曲家です。
その彼の音楽がどれほど多様で、またその解釈がいかに進化しているかを感じさせるのが、今回ご紹介するアルバムです。
指揮者マクシム・エメリャニチェフと、古楽器オーケストラのイル・ポモ・ドーロによるこのCDは、交響曲第29番、第40番そしてオーボエ協奏曲を収録しており、まさに“21世紀のモーツァルト”と呼ぶにふさわしい一枚と言えます。
エメリャニチェフのダイナミックな指揮
ロシア生まれのエメリャニチェフは、才気あふれる鍵盤楽器奏者として知られていますが、このCDでは彼の指揮者としての魅力も存分に楽しめます。
録音されたのは2023年2月であり、彼の生気に満ちた演奏スタイルが鮮やかに表現されています。
ピリオド楽器の特徴とも相まって、キビキビと突き進む生き生きとした音楽が展開されており、聴いているこちらまでその活力を感じることができます。
魅力的な交響曲とオーボエ協奏曲
特に交響曲第29番では、モーツァルトが18歳で書いたこの作品における若き天才の心意気を感じることができます。
第1楽章はその美しい旋律が力強く、堂々と描かれているのが印象的です。
緩徐楽章である第2楽章は、リズムが意識されつつも流れるような歌が展開され、さらにはオーボエ協奏曲も登場します。
ここでのソロは名門ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席奏者によるもので、彼のバロック・オーボエがひなびた音色で響き、バックのリズムと絶妙に溶け合っています。
激しさの中の美しさ—交響曲第40番
次に待っている交響曲第40番は、一般に悲哀に満ちたロマンティックなイメージで知られていますが、エメリャニチェフの指揮によって、そのイメージが見事に刷新されています。
特に第1楽章は快速テンポで、力強く前進していく様子が印象的です。
これにより、これまでの穏やかさは影を潜め、全体が鮮やかに生き生きとした活力に満ちています。
各楽章間の弛緩がないのは驚くべきポイントで、聴く者に一瞬の心の休まりも与えないほどです。
新しい解釈で再認識するモーツァルトの魅力
このアルバムは、単なるクラシック音楽好きにはもちろん、音楽に新しい解釈を求める方々にも強くお勧めします。
エメリャニチェフが描く“21世紀のモーツァルト”は、既成概念から解放された大胆なアプローチを採用しており、聴く者に新たな発見を与えてくれます。
若きモーツァルトのフレッシュな魅力を再認識させられるこのディスクは、音楽ファンにとって得難い一枚となることでしょう。
ぜひ手に取って、実際にその音楽を体験してみてください。